【参加者レポート】漫画家ビジネススキル講座

LINEで送る
Pocket

「結局みんな人間なんだよね」

 10月15日にマンガ新連載研究会が主催した「漫画家ビジネススキル講座」は、架神先生のそんな話でまとめられた。
 今回の講座は漫画家が出版社に頼らず生きていくために、企業と仕事をする上での処世術を紹介するものだった。

 題目を見て「自分が知りたかった情報がここにある」と思った。私は駆け出しの漫画家だが、一度企業からイラストの仕事を引き受けたことがあった。その際、相場や交渉の仕方、スケジュールの決め方など、右も左も分からず大変苦労した。この講座に参加して、少しでも先人たちの知恵を借りたかったのである。
 知識がないこともさることながら、実績も実力も不十分な自覚がある。だからといって、これから漫画で実績を作るのではあまりにも時間がかかりすぎる。そんな人間が、どう企業と仕事をしていけばいいのだろうか。

 講師はツイッターのフォロワーが13万人超の、Web漫画家のやしろあずき先生。主にSNS漫画家と企業をつなぐ仕事をされている株式会社wwwaap(ワープ)代表取締役社長、中川元太先生。そして新連載研究会の主催である東京ネームタンク代表のごとう隼平先生と、小説家で漫画原作者である架神恭介先生の4名。

 和やかな雰囲気とは裏腹に、講座の内容はとても現実的で生々しい。企業との交渉方法やお金、契約書の話が具体例とともにバンバン飛びかい「おぉ、それです!それが知りたかったんですよ!」と言いたくなるような、企業と仕事をする上で知っておきたい情報がてんこ盛りの2時間だった。

 しかし、何よりも印象に残ったのは、講座を通してずっと語られていた「人間」というテーマだった。企業と仕事する際に「怖い」と萎縮する気持ちは誰にでもあると思う。企業と対等に仕事ができるのは神絵師や、輝かしい実績のある人だけ。そうでない描き手は企業から無理難題を言われ、悪意とともに安く買い叩かれ、つらい思いをするのではないか。企業と仕事なんて、恐ろしい……と、私はビビり倒していた。

 講義で語られたのは、企業の側も「別に悪意があるわけではない」ということだ。
 企業というものは当然の姿勢としてコストの削減を考えるらしく、そこに悪意はないのである。びっくりするような金額で発注してくるのも「漫画・イラストの相場」を企業側も知らないからなのである。「企業も相場を知らない」という事実が私には新鮮だった。
 そして、最初に提示される金額や納期は、先方の「希望」にすぎない。
 「えっ! なら先方に『やだよー! もう5万円くれよー!』って言っていいんですか?」という架神先生の質問に「言うだけは言っていいと思いますよ。」とあっさり答えるゲストのお二人。この発言には心底、驚いた。言っていいんだ…。

 もちろん言うだけではダメで、金額を上げるに足る理由を合わせて提示しなければならない。その交渉をするためにも、発注を受ける作家側にも相場の知識が必要なのである。なるほど、知識は力なのだと実感する。

 それに発注者側である企業も、やりとりするのは人間。
 「頼む側も人間ですから」
 向こうも内心は不安でいっぱいなのである。中川さんは「遅れることって当たり前にあると思うんですよ。それは仕方ないと思うので。でも連絡がないと不安」と話す。だから連絡はこまめに欲しいし、それができる人には仕事がふりやすい。

 他にも具体的で納得できる話がたくさん聞けたが、そもそも企業から仕事をもらえなければ話にならない。やしろ先生のように「フォロワー数13万以上のツイッタラー」という強さがあるからこそ仕事の発注があり、このような交渉のテーブルにつけるのではないか? そう考えると自分にはあまり関係のない話なのかな、と一歩引いた気持ちになりかけた時、架神先生が会場に向けた言葉が強く刺さった。

 「今回はツイッターに強いやしろ先生の話をしていますが、これは一つのモデルケースにすぎません。みんな『独自の強み』があるのだから、それを探しましょう。」

 これは一部の、突出した実力がある人にだけ向けた話ではない。イラスト・漫画描きたちはみな、絵を描き上げる・漫画を描き上げるという優れたスキルを持っている。そんな人々が自分の「強さ」を見つけられたなら、この講座の処世術はとても役に立つだろう。

 自分の「強み」がわかれば、私でも企業と交渉ができるのかもしれない。
 そんな希望を見出したビジネス講座であった。

他の参加者のみなさまのご感想まとめはこちら
「漫画家ビジネススキル講座」の動画はマンガ新連載研究会会員になると全編視聴できます。

コメント

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください